能登の桜

昨年の元旦に能登半島を襲った震災は、いまだ復興途中のままに豪雨被害も重なり次の冬を迎えることとなりました。
東日本大震災時にたまたま出張で訪れていた仙台で被災した自分は、震災被害のテレビ映像を見るたびに胸が詰まる思いです。
震災前の能登にも仕事(?)で数回訪れており楽しい思い出がいっぱいあります。
一口に「能登」と言っても今回被害の大きかった輪島市などの半島の鎌首の頭部分の能登北部を「奥能登」、羽咋市などの半島根元の入口部分を「口能登」、七尾市など和倉温泉のある真ん中を「中能登」と言います。
一般的には「口能登」と「中能登」のエリアを合わせて能登南部と呼びます。
ちなみに「能登」(能登国)も「金沢」(加賀の國)もみんな同じ「石川県」です。
決して「金沢県」ではありません。
とにかく縦に長細い県(約200㎞)なので、一度ゆっくり地図を見て「石川県」の形を覚えてください。
きっと忘れられませんから・・
今回のお話しは輪島方面の「奥能登」の話です。
能登半島には「能登鉄道」という鉄道が「輪島駅」まで伸びていましたが、2001年「穴水駅」から「輪島駅」が廃線となり、現在はJR七尾線と三セクで途中の「穴水駅」が終点となっています。
ただ、今でも「輪島駅」には短い疑似線路と、終点を模した車止めの風車マークがあります。


ご存じの方も多いと思いますが、輪島の朝市通りにご当地出身の「永井豪記念館」があります。
残念ながら今回の大火災で全焼してしまいましたが、中の展示物は無事だったとのニュースが流れていました。
無事に復興できますよう祈っております。




以前、自分が能登を訪れたときには終点穴水駅手前の「能登鹿島駅」の桜満開で、鉄道車両が「マジンガーZ」や「キューティーハニー」のラッピング電車になっていました。(現在は違うラッピングになっているようです)
心なしか桜の中で見るマジンガーZは笑っているようでした。


自分は永井豪のTVアニメにドンピシャ世代なので、今でも本棚に「パイルダー」(※)のフィギュアが並んでいます。(※わからない子はお父さんに聞いてね!)
余談ですが、自分の一番のお気に入りは「デビルマン」です。
当時、不動明の「A」のロゴマーク入り黄色いTシャツを探し回ったものです。
皆さんの中には輪島の朝市に訪れた方も多いと思います。
地元の海産物を中心に、おばちゃん達?が露店を出して声掛けされる様子は、ただ歩いて試食するだけでも十分酒の肴になります(もちろん酒も売っています)
その中で一番のお気に入りだったのは「たこの凧?」(または火星人?)です。

まぁ簡単に言えば「たこの干物」ですが、風になびく姿が物悲しくて、部屋に飾っておきたいくらいでした。(出来ればイカとセットで!)
ちなみに能登半島(石川県)には日本酒の酒蔵が沢山あります。

能登は日本四大杜氏(※)の発祥の一つに数えられており、中でも「能登杜氏四天王」をはじめ多くの名杜氏が全国の酒蔵に広がっております。
(※杜氏 = 酒造りの総監督を指す。社長が杜氏を兼任している蔵も多い)
(日本四大杜氏 = 南部杜氏・越後杜氏・丹波杜氏・能登杜氏)
(仕事のついでに)能登の酒蔵巡りをした際、奥能登の酒蔵の分布図を見て「酒蔵が海岸沿いに多い」と思ったことがあります。
能登町宇出津の「風来坊」という居酒屋の親父さんが教えてくれました。
「能登半島の中心は隆起した山で、町と町を繋ぐのに昔は陸路が無くて船による水路が交通手段だった。
北前船の物資も船で運んで、港が栄えたおかげで人口も多くなり、能登水系の水も酒造りに適していたため酒蔵が出来た。
だから奥能登の酒蔵は港々の人が住み着いたところに点在している。」とのこと。
なるほど!石川県には能登水系と白山水系(加賀の國)の酒蔵がある。
能登水系は先の通り海沿いが多いが、白山水系の酒蔵は小松方面の「白山」の山裾が多い。
(天狗舞・菊姫・農口など、やはり銘酒ぞろい)
「人の住むところ酒蔵あり!」昔の人は地形に合わせて水を求めて、おいしい酒造りに努力したのだな~と感心!
さて、その「風来坊」でのエピソードをひとつ。
「風来坊」は港町・宇出津の細い路地を入ったところにある小さな居酒屋。
宇出津は能登半島の鎌首の内海にあり、能登町の役場がある波の穏やかな港町。
地元の銀行支店長のに連れられて、何でもミシュランガイドにも載る有名店らしい。
とにかく海産物がおいしい!魚も貝類やカニも次々と出てくる。
これを地元宇出津の数馬酒造の銘酒「竹葉 生酛純米・奥能登」で流し込んでいる時にガラっと来客。




なんと、滋賀県にある喜多酒造の杜氏が「鑑評会で金賞取った!」と、金賞ラベルを貼った「喜楽長」の一升瓶を片手にもって喜びながら入ってきた。

「なぜ滋賀県の杜氏が?」と心の中で思っていると、親父さんが「彼も能登杜氏で修業したのさ」との説明に納得!
それからは大盛り上がり大会で、お店にと持参した「喜楽長」を一口飲んでみたいとの支店長(だったと思う)のリクエストにより開封の儀式!
ご相伴にあずかりと一合の蛇の目杯でゴクリ・・「め~」と思わずヤギに変身!?
(んっ?ひつじか・・?)
これはウマいと支店長と差しつ差されつ注がれるままに何杯も杯を空け、気が付いたら一升瓶が空に・・・
「あちゃ~酔った勢いでとんでもないことを (-_-;)」と深く謝ると、「大丈夫!酒は飾っておくもんじゃなく飲むもんだから」とやさしく親父さん
「そうだ!そうだ!酒も飲まれて幸せだ~」と支店長!
親父さん「お前が言うな! (一一”)(笑)
何はともあれ美味しくて楽しい夜でした。
翌日、車で海岸線を一周、途中で「千枚田」と「塩田」で休憩。
海岸線に向かって段々畑の「千枚田」は一言で言うと「美しい」
でも実家が農家の私としては「絶対に田植えはしたくない」と思いました。


「塩田」は昔ながらの砂地に海水をまいて乾燥⇒煮沸する方法で、お土産に買ったこの塩で天ぷらを食べると最高でした!でも塩分取りすぎには注意してね!


能登半島も先端まで来ると珠洲市に入ります。ここには知る人ぞ知る能登杜氏発祥の蔵と言われる「宗玄酒造」があります。
ちょうど訪れた時に、入口に2本の「宗玄」が並べておいてあり「金賞」の賞状がありました。
「新酒鑑評会って2つも金賞取れるんですか?」と尋ねたところ「うちの蔵は2つの蔵が合わさって一つの「宗玄」になっていますが、「平成蔵」と「明和蔵」とそれぞれの蔵から出品したので二通りの造りになって杜氏も二人いるんですよ」
「なるほどそれでW受賞ですね!すばらしい!」一粒で二度おいしい感じがします。
ただ珠洲市の震災被害は特に大きく、宗玄酒造も蔵本体の被害だけでなく、廃線跡を利用したトンネル貯蔵庫が埋まってしまったとのことでした。



震災被害のニュースを聞くたびにいつも思うのは、自分は何もできずにもどかしいばかりで、ただ一日でも早い復興を祈るだけしか出来ないということです。
今年も能登に桜の季節がやってきます。あの桜の中を走るラッピング電車のように、たくさんの人が心弾ませ能登を楽しんで美味しいものを食べに訪れますよう、まずは被災した皆さんの生活が戻り元気な能登を取り戻していただくことを願っております。
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