【ばっけの天ぷら】

先日、朝起きたら京都にも大雪が降っていて、外の道路は真っ白になり、ノーマルタイヤの自分は「こりゃ大変だ!どうしようか!?」とヤキモキした思いでいましたが、午後には多少気温が上がったため、積もった雪も溶けだしてすっかりいつもの景色に戻り「人生どうにかなるもんだ」と改めて自分の人生訓に納得していました。
この季節の大雪を見ると「ばっけの天ぷら」を思い出します。
10年ちょっと前になりますが、仕事で秋田の乳頭温泉近くの観光ホテルに宿泊した際、ホテルのオーナー社長と顧問税理士と3人で夜の宴会になりました。
途中で調理場がはねた料理長も参加して「森伊蔵」などの銘酒で舌鼓を打っていたところ、いきなり社長が「ばっけが食いたい!」と言い出しました。

「ばっけとはなんぞや?」と聞くと、東北では「ふきのとう」を意味するらしい。
なるほど!自分も小さいころ春先に実家の畑あたりに群生していて、祖母がたまに天ぷらにして食べた記憶があることを思い出しました。
(ただし子供だった自分には苦い草の記憶しかないけど・・)
「でも、こんな大雪の中ではまだまだ無理でしょう」と言うと、料理長のプライドに火がついたらしく「ちょっとお待ちを・・」とすっくと立ちあがり部屋を出ていきました。
社長が部屋の窓から向かいの雪山を見て「あー採ってる採ってる」と楽しそうに手招きするので、窓から視線を下に落とすと料理長が片手にザルを持って雪山の中に手を突っ込んでいました。
「何かつかまえているの?」と社長に聞くと「ばっけをね!」とのこと・・
こんな雪の中に「ふきのとう」はいないでしょ!と言うと、税理士の先生が「それがいるんだな」と、まるで虫でも捕まえるようにニヤニヤ笑いながら返してきました。
10分と経たないうちに料理長がザルいっぱいの「ばっけ」を持って無事生還!
後を追うように追い回しの料理人が天ぷらの準備を持ちこんで、どこぞの高級料亭さながらに目の前で「ばっけの天ぷら」を揚げてくれました。
まだ蕾の「ばっけ」にかるく塩をふって揚げたてを「ハフハフ」言いながら食べた時に、「実家の天ぷらと全然違う!」と言うと、料理長が「そりゃ~世界で一番採れたてのばっけを世界一の料理人が揚げたんだもの」と自慢気に言いました。
子供のころ、あの「苦かった草」は、今や「ほろ苦さが癖になる極上の酒のつまみ」に大変身したのです。
社長が「ばっけはちいさな花なのに、こんな雪の下でも自分の熱で雪を溶かして芽を出す力を持っているし、何より一足先に春を知らせてくれる。さらに食べてもおいしいしね!」と楽しそうでした。

ちなみに、もう少し季節が進み春先になると「ネマガリダケ」という小さなたけのこみたいな山菜が採れて、これを焼いて外の皮をめくり、ばっけを刻んで味噌とあえた「ばっけ味噌」につけて食べると、いくらでも酒がすすむ「悪魔の食い物」との説明も受けました。聞いただけでヤバそうなつまみです・・(後日談でご説明いたします)


豪雪被害の地域の方には失礼な話ですが、大雪がすべてを覆い隠しているばかりではなく、こんなふうに春のための準備もお手伝いしているのかと思うと、ちょっとは許せる気がします。
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